fc2ブログ

■ 南アフリカのビルボード  

先日、南アフリカのニュース番組で風変りなビルボード(広告板)が映っているのをチラッと見た。

ビルボードは幹線道路を見下ろすように立っていて、高さは5m以上もあるだろうか。全面に小さいものがペタペタとが貼られ、よく見るとそれはジンバブエの実物の紙幣だった。

上部には”Mugabe....crazy...云々と、一瞬で馬鹿にするような内容だとわかるキャッチフレーズがある。
ジンバブエのインフレを嘲笑する広告なのだ。

広告主なのだろうか、40代の白人の男がインタビュアーに何か答えていたが、車の往来が激しくよく聞こえなかった。

ジンバブエ人であれば、これらの紙幣にはみな痛みや憤りを感じる。人々は、お金を引き出すために炎天下、何時間も何日も銀行の前に並ばなくてはならなかったのだ。加えてやっとお金を手にした時には、価値が下落している。その苦痛を笑える人などいるだろうか。

いや、ジンバブエ人でなくても、ちょっと想像すれば、ハイパーインフレのために人々がどんなに苦しい思いをしなくてはならないか、察することができる。

昨年6月、私はウガンダの首都カンパラに住む友人を訪ねた。

久しぶりに友人と古い知り合いを訪ねたところ、ジンバブエはどんな様子かと聞くので、100万ドル札を見せ、それがどんなスピードで価値を失っていったかを話した。
彼女の目に憐みが浮かび、「...too bad...too sad...」と首を横に振り、その札を買わせて、とハンドバッグを取りに行った。

また、韓国料理の店では、ウェイターにジンバブエのことを聞かれたので話したところ、まるで自分の兄弟を憂えるかのような表情に変わった。
そのウェイターは、おどろくほどジンバブエのことを知っており
アフリカ全体が自分の国、という感じだった。

国境を接していないウガンダだが、会った人たちには、みなこのように人の痛みを思いやる気持ちがあった。
はたしてどんな人たちが、ビルボードにジンバブエの札を貼りつけることなどを考えるのか。

人の痛みや苦しみが分かる人であれば、ガソリンなどの宣伝のためにあるようなビルボード全面に隣国の札を貼りつけるようなことはしないだろう。

たとえその広告のどこかに「民主化を進めよう」だの「救済計画」だのという聞こえのいい飾りがついていても、苦しめられた人たちはすぐに見抜くのだ。
この広告は、インフレを笑い、ジンバブエの政府を笑い、
ムガベ=黒人には何もできないと思い込ませるためにあるということを。

南アフリカの黒人も同じように感じているに違いない。

                 高橋 朋子

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://jenaguru.blog57.fc2.com/tb.php/365-c0503994