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■ ヨハネスバーグ行き 

香港から南アフリカに向かう便には、あらゆる人種が
乗る。日本を経って5時間ほどなのに、グンとアフリ
カに近づいた感じだ。

12時間を越える長旅なので、少しでも足が伸ばせる
ように、早々と非常口横の通路側の席をとっていた。
エコノミークラスが満席になると、身動きがとれなく
なるのだ。

前日、殆ど眠らずに空港に向かったので、座席に着くと
すぐにシートベルトを締めて目を閉じた。
数分後、何かにぐーっと押され、自分の体が通路側に
曲がった。隣の人の体がこちらにはみ出してきたのだ。
私の座席の3分の1を隣席の男の肩が占領している。
大男が座ったのだ。

スチュワーデスがその客に、「のちほど○○番の席に
移れますから」と言った。「○○番?、それはどのあたり
にあるんだ?」と男は威張りくさって答えた。
あんな答え方をするなんで、一体、どんな顔をしている
のか。私は横目でチラッと隣を見た。

カーキ色のシャツを着た50代の白人。南アフリカで
徹底的に黒人を踏みつけてきた顔だ。私は、サラフィナ
という映画を思い出した。
   アパルトヘイト下の南アフリカ、銃をかまえたポリス
   を乗せたトラックが黒人のタウンシップに入っていく。
   逃げる子どもたち、その背に銃口を向け
   「撃て!!!」と号令をかける男。
あのタイプだ。

スチュワーデスは二度と来ず、隣席の男は○○番に移動する
気配もない。食事を終えると、いびきをかいて眠ってしまった。

私は、体を斜めにして眠った。あまりに押され方がひどくな
ると、クッションを間にはさんで、押し返した。


翌朝、男は靴をはこうと立ち上がり、向かい側の乗務員
用の椅子を倒して座った。肥満した巨体である。
広い椅子でなくてはかがむこともできないのだ。
男は、やっとかがむと靴紐を結んだ。

その時、座席の上に分厚い本が見えた。こういうタイプは
どんな本を読むのか。私は横目でタイトルを読んだ。
まさかと思って、何度も見たが、やっぱりこう書いてある。

   「アパルトヘイトの友
       南アフリカの秘密警察の光芒」

アパルトヘイト(人種隔離政策)に友達などあるものか。
こういう言葉を思いつき、本のタイトルにする人間も
いるのだ。ジンバブエが独立したあと、「ローデシアは偉大
だった」と印刷したシャツを作った白人がいたではないか。


飛行機が着陸すると、この男の友人が数人やってきて
雑談しはじめた。男は、その本について話している。
体型は様々だが、みな、どこか似たような顔をしていた。

                    (高橋)






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