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■ アフリカ展の客 

HOME SWEET HOME


   どこかで会ったことがある男の人がアフリカ展に来た。
 「オレは南国生まれだからな」と言って笑う。
  その一言で、私はその人を思い出した。昨年もこの会
 場に来て、挨拶がわりにそう言った人がいた。どこかで
 はなくて、ここで会ったのだ。
 
  昭和8年頃、父親が山形の菓子屋の社長に誘われて、
 砂糖が採れるサイパンに一家で移住し、そこで生まれた
 という人だ。
  バオバブの木の表皮で編んだバッグやバナナの木の
 皮で作った人形など、南国の匂いがしそうなものを
 次々と手にとって懐かしんでいる。今もはっきりと覚えて
 いるのは、南の匂いなのだという。
  当時のサイパンの話を聞いていると、上山で仕事をし
 ている友人が来た。毎日のように顔を出してくれている。
  私の友人のMが作った女の人の横顔のアップリケと
 刺繍でできた壁掛けを指差し、あれが欲しいという。
  その壁掛けは力作で、ご丁寧に言葉まで刺繍してある
 のだ。
  ジンバブエではキリストの教えが書かれたものを台所
 にかけたり、居間に貼ったりするが、”東西南北、我が家
  が一番”という、日本の”家内安全”のような言葉も多い。
  Mが刺繍したのは、”HOME SWEET HOME” だ。
 それを女性の横顔の上下左右4箇所に入れてある。
   しかし、見ているうちにスペルが間違っていることに気が
  ついた。
   「あらら、SWEET甘いが、SWEAT、汗になってる」。
  Mに見せたら、照れて大笑いするにちがいない。
   友人は、たいして気にもかけず自分の店に飾りたいと
  言って、その横顔のアップリケを買ってくれた。
               (高橋 朋子)

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