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■ 空地を耕していた2人 

札幌アート展 ジャカランダ 017



1ヵ月ほど前、家の近くを散歩してたら遠くから声をかけられた。
声の方を見ると、広い空地に女の人が2人立っている。
私が立ち止まると、その1人が走って道路脇までやってきた。
どこかで会ったことのある人かと思ったが、そうではなく、「仕事を探しているのだけど、心あたりはないですか。」とのことだった。

2人は数ヶ月前に200Km ほど離れた田舎からハラレの親戚を訪ねてきたが、インフレでバス代が跳ね上がり、田舎に帰れなくなったのだという。
その日は、12Km離れたエプワースという地域から歩いてやってきて、雨期にとうもろこしを植えるために空地を耕していた。
以前、近くに住んでいたおばあさんにこの場所を聞いたらしい。年齢は19歳と20歳、あまりに物価が高くて何も買えず、空腹のまま寝床に入る日が多い、どうすればいいのかわからないと嘆く。

2人が耕している場所に行ってみた。
そこにはクワが1本、長そでの上着、そして大きめの布が1枚あるだけだった。飲み水もなく、土の上には、皮をむいたマタンバの実が数個ころがっている。甘味もなく、種が多いので空腹の足しにならなかったのだろう。
靴がないところをみれば、2人は焼けたアスファルトの道を、裸足で12Km歩いて親戚の家に帰るのだ。

私は家に帰り、オレンジジュースをボトルに入れ、ミリミール(とうもろこしの粉)を袋に入れた。パンのようにすぐに食べられるものがあればいいのだが、それもない。
靴もあげたかったが、24cmのサイズが入る大人など、ここにはめったにいないのだ。

その日、テレビでは連立政権の盛大な調印式の様子をライブで流していた。
ステージに上がっている人達は、みな血色がよく栄養も十分とれている。
食料が高く、限られたものしか食べられないせいか、このごろは人を見るとまず最初に栄養に気がいってしまう。

空地に戻ると、クワを下ろしていた1人がこちらを向いてニコッと笑った。私が戻ってくるとは思っていなかったのかもしれない。
私は包みを渡し、「どこかで見かけたら、また声をかけてね。」と言って、その場を離れた。

あれから1ヵ月が過ぎ、昨日、雨期を告げる大雨が降った。
景色は一変し、うれしそうな木々の間を鳥がさえずりながら飛びまわっている。

連立政権の方は、各省の配分で与党と野党がいまだに合意をせず、話し合いは5日目に入ろうとしている
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■ またもや電話線が盗まれて・・・ 

電話がつながってやれやれと思っていたところ、またつながらなくなってしまった。前回の修理で、電話線をこれまでの太いものから盗んでもたいしたお金にならないという細いタイプに換えたので、泥棒も近寄るまいと思っていたのだが、故障の原因は何なのだろう?


電話局に届けたところ、あなたの地区は今、修理中なのでもうすぐ直りますとのことだった。しかし、何日待っても直らない。いつのまにか10日が過ぎてしまった。
一体、どのあたりを修理しているのだろうと電話局のあたりに行ってみると、偶然、向こう側に修理車が停まっていた。


作業着を着た男の人に、修理はいつ頃になるのかと聞くと、その前に前金がいる、というようなことをほのめかした。
こちらでは、与党と野党が連立政権に合意して1か月になるというのに話し合いがつかず、「決裂」のニュースが流れると同時に、更なるインフレがはじまっている。
こんな状態では月末に給料が出ても何も買えまい、ついては”ヘルプ”願いたいと言うわけだ。


政府の学校では、インフレの激しさにもう生活ができないと放課後に補修授業をし、生徒が払うお金や物品でサバイバルしている先生達がいる。今や電話局も学校と同じなのだ。


どれくらいの額を”ヘルプ”というのか聞いてみると、2人分でUS50ドルとのことだった。
結構な額だ。高い。しかし、頼まなければ、この先ずっと電話もパソコンも使えないだろう。私はしぶしぶ了解した。


私の返事に急に元気になった男の人は仲間を呼び、早速、仕事にとりかかった。
あちこち調べ、自宅近くで電話線が盗まれているのが原因だとわかる。最近は、地中に埋めてある電話線さえ盗む連中がいるらしい。仕事があれば誰も電話線なんか盗まないだろうし、数年前までは、こんなことはなかったのだ。


電話は30分後に開通し、2人は「何かあったらいつでも呼んでくれ!」と手を振って帰って行った。

久しぶりにパソコンのスイッチを入れ、プロバイダーにつないでみたがつながらない。
電話をして聞いてみると、料金が未払いのため回線は切ってありますと言う。料金は、全額払ったではないか。いったい残金はいくらなのかと聞くと、160万ドル!と言う。この3週間の間に2000ドルから160万ドルに上がったというのだ!

一体、何がどうなっているのか。
私は電話口で思わず「ヘルプ ミー」と言っていた。

       (ジンバブエ 高橋)